2019年のバス釣り関連リールで注目の話題の1つが、ダイワの丸型リールの名機ミリオネアの復活です。
2019年5月発売を予定しています。
ミリオネアはもともとバスフィッシング用リールとして誕生しましたが、2008年に姿を消していました。
直近では、船用手巻きリールのフラッグシップ的な存在であるミリオネアバサラというモデルが存在するのみとなっていました。
そんな中で2019年、突如としてバス用リールとして復活するミリオネア。
その名の通り、CTコンセプトを搭載したことでどんなミリオネアに進化しているのか?
ここでバス用にミリオネアを復活させたダイワの狙いは何なのか?
考察していきます。
アイキャッチ画像出典:ダイワ
コンセプト
まずはダイワ公式のキャッチコピーや紹介に目を通して、このリールの雰囲気を掴みましょう。
アルファスCT SVの紹介文もそうなのですが、ダイワが熱を込めすぎて長文になっているので、ポイントを赤字にしています。
サラッと読んでみてください。
CT(COMPACT&TOUGH) SVスプールで進化を遂げてミリオネアここに復活。
2008年を最後にバス用としては姿を潜め、活躍の舞台をソルトウォーターへと譲っていたラウンドシェイプの名機・ミリオネア。2019年、新基軸ユニットで武装して、バスフィッシングシーンへといよいよ戦線復帰。満を持して、群雄割拠のファーストムービング界へと乗り込んでいく。その名もミリオネアCT SV。トラブルレスで定評のSVに加え、30φ小口径CTスプールを一挙投入。ギア比は6.3の70H、7.2の70SHの2モデルを用意。59センチ、68センチのハンドル1回転巻き取り長を見れば、自ずと巻き重視のスペックであることに気づけるだろう。ミリオネアがCTコンセプトたる理由。それはファーストムービング、特に小型軽量モデルでのアドバンテージを徹底追求するためだ。従来のベイトリールではキャスタビリティに難があった5g以下の軽量ルアーでもスムーズにラインを送り出し、難なく狙いのスポットへと到達。存分な強度を誇るG1ジュラルミン素材は、重量級ルアーへの対応力ももれなく向上。1台でひと役もふた役も担う、頼りになる強い味方だ。何より特筆すべきは、優れた巻き感度。オールマシンカットボディは、寸分のブレもない巻きを実現。同時に金属のダイレクト感は水中の些細な変化をも手元へと伝え、アングラーの集中力持続に貢献。時代と共に精度を高めてきたDAIWAテクノロジーがボディにさらなる剛性感を確保したことは言うまでもない。超小型高性能エンジンを秘め、確かなフレームで支えられた堅牢ボディの新生ミリオネア。ハイプレッシャーに追い込まれた激戦区を始め、コンペティションの舞台でも値千金の1尾を掴む準備がこれで整った。出典:ダイワ
ポイントを抜粋すると以下の通り。
・ファーストムービング
・SV
・30φ小口径CTスプール
・59センチ、68センチのハンドル1回転巻き取り長
・小型軽量モデルでのアドバンテージを徹底追求
・5g以下の軽量ルアーでもスムーズ
・G1ジュラルミン素材は、重量級ルアーへの対応力ももれなく向上
・オールマシンカットボディ
やはり丸型リール得意の巻物を強く意識したリールであることが分かります。
ただし、その得意ウェイトが5g~10g程度であり、仮に5g以下のルアーをキャストしても気持ちよく飛ばせる…というのが大きな特徴ですね。
加えて、G1ジュラルミン製CTスプールの強度のおかげで、軽量ルアーにしか対応できないわけではなく、重量級ルアーもカバーできるという巻物バーサタイル的な要素を兼ね備えています。
オールマシンカットボディが与える影響も気になるところ。
次項から、より詳しく掘り下げていきましょう。
ダイワテクノロジー・仕様
まずはこのリールに搭載されている技術や仕様を各個ご紹介していきます。
詳細
特記すべきものは以下の通りです。
・SV CONCEPT
・CT CONCEPT
・UTD(アルティメットトーナメントドラグ)
・SPEED SHAFT(スピードシャフト)
・エアブレーキシステム
ミリオネアCT SVというネーミングからも想像はつきますが、TWSは搭載されていません。
これはアルファスCT SVも同様です。
スティーズCT SV TWとの差別化なのでしょうかね?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
もう十分ご存知だという方はスルーしてください。
SV CONCEPT[SVコンセプト]
SVとはストレスフリーバーサタイル(Stress free Versatile)の略ですね。
マグネットブレーキのメリットを活かしてバックラッシュを減らしつつ、幅広いルアーを扱えることを目指したバーサタイルリールコンセプトです。
ストレスフリー、トラブルレス…とダイワは訴求していますが、個人的にはそこまで劇的な効果はないと感じています。
ベイトリールのバックラッシュは構造的に避けられないものなので、そこは仕方ないかと思います。
将来的に高度なデジタルコントロールブレーキの進化で克服する可能性がないことはないですが、現段階では難しいでしょうね…。
いずれにせよ、ベイトリールでは適切な糸巻量で、適切なウェイトのルアーを投げることが重要です。
SVは、マグダイヤルの操作だけでかなり幅広いウェイト幅のルアーに対応できるのは強みだと思います。
ただ、個人的に思うのは、このSVコンセプトはTWSと組み合わせることで、本来狙っている効果が最大限発揮できるものと考えています。
ミリオネアCT SVにTWSが搭載されていない点は非常に残念です。
アルファスCT SVにも搭載されていませんが、アルファスは実売2万円台のミドルクラスリールという側面もあるので、分からなくもありません。
しかしながらミリオネアCT SVは定価52,500円。
実売で4万円台ですから、上位クラスのリールであることは間違いありません。
このグレードならTWSは搭載すべきではなかったか…というのが個人的感想です。
CT CONCEPT[CTコンセプト]
CTはCOMPACT&TOUGHの略です。
ダイワに確認したところ、今後、オリジナルサイズが存在するリールに対して、ダウンサイジングさせた70番ボディにCT SVスプールを搭載したリールを発売する場合にCTコンセプトとなる雰囲気です。
初速の立ち上がりが抜群なので、フィネス寄り、例えば5g以下のルアーでも軽々キャストできるスプールになっています。
半面、超々ジュラルミンの1.3倍の強度を誇るというG1ジュラルミン製スプールの恩恵で重量級ルアーもこなすという、今までにないバーサタイルコンセプトと言えます。
スティーズCT SV TWのように、SVコンセプトとTWSが組み合わさってこそ最高のポテンシャルを発揮できると思いますが、SVコンセプトとのセットだけでも初速の立ち上がりとアキュラシー向上は間違いないでしょう。
エアブレーキシステム
出典:ダイワ
SVコンセプトにとって重要な存在です。
インダクトローター構造になっているのですが、簡単に言うと、フルキャスト時(高回転時)にはインダクトローターが飛び出してブレーキが効きますが、ピッチングなどの低回転時には飛び出さない仕組みになっているので、不必要なブレーキがかからずに低弾道で伸ばせる…そんなシステムです。
ミリオネアCT SVの場合、シャロークランク、シャッド、スピナベ、シャッドテールワームなどの巻物を正確無比なキャストでストレスなくテンポよく撃っていく…そんなスタイルには間違いなく活きてくるはずです。
UTD[アルティメットトーナメントドラグ]
ドラグ効き始めの初期の食い付きを解消し、スティック(ムラ)のない滑らかさを実現しながら締めれば締めるほど効く最大ドラグ力を兼備する。
出典:ダイワ
たいそうな名前がついたドラグですが、究極にすごいドラグという訳でもなく、いい意味で普通のドラグです。
SPEED SHAFT[スピードシャフト]
スプールはBBによって支えられているのみ。 シャフトレスにより余分な抵抗がゼロになり、理想のスプール回転が得られる。
出典:ダイワ
限りなくスプールとの接点を減らすべく考案された構造です。
スプール初速の立ち上がりに重要なのはもちろん、飛距離を伸ばすためにも外せない仕組みですね。
ラインナップ
4モデルがラインナップ。
ボディは全て70番サイズで、ハイギアとスーパーハイギアモデルを左右ハンドルで用意されています。
出典:ダイワ
さすがミリオネア…というべきでしょうか、非常に高価なリールです。
オールマシンカットボディですから、自重は210gと決して軽いとは言えない水準です。
巻物を強く意識したリールですから、巻取り長さはこんなもんでしょうと思いますが、スプールサイズが小さな分、ギア比を高くすることで巻取り長を稼いでいます。
後述しますが、ライバルと思われるシマノのカルカッタコンクエスト100はギア比がもっと低くなっています。
このようにギア比が高めになることはCTコンセプトの特徴と言えそうです。
ミリオネアCT SVの魅力
ミリオネアCT SVの魅力など考察してみたいと思います。
オールマシンカットコンパクトボディ+CT SVスプール
オールマシンカットのコンパクトボディにCT SVスプールを搭載したリールは、現時点ではミリオネアCT SVしか存在しません。
巻物をやりこんでこそ輝くリールであることは間違いありませんが、剛性の高いマシンカットボディに納まった、スティーズCT SV TW譲りの高性能スプールがもたらす小型ルアーの巻き感度に関して、今までにないフィーリングが得られるのではないかと思います。
小型ルアーのキャストフィールが抜群なのは容易に想像できますが、真価を発揮するのはやはり巻き始めてからでしょう。
水中の何かがルアーに与える影響を感じることに関して、このマシンカットボディとCT SVスプールのコンビはかなりいい仕事をするはずです。
小型軽量ルアーの巻きの釣りに限定して考えるなら、こんなサイズのスプールを搭載した丸型リールは存在しない訳ですから、それだけで圧倒的なアドバンテージです。
復活の狙いは?
ミリオネアをCTコンセプトで復活させたダイワの狙いはどこにあるのでしょうか?
あくまで個人的考察にはなりますが、やはりシマノのカルカッタコンクエストに対抗できる新たな刺客をたてたかったのだと考えています。
近年、ダイワのバス用丸型リールはリョウガが背負って立ってきました。
剛性、巻き感度は非常に高い評価を得ていますが、その反面、いかんせん重いというイメージも強いリールです。
実際、1000番サイズで255g、1500番サイズでは270gあります。
スプール径に関しては34mmと36mmという、ある種バスフィッシングにおいては王道と言えるスプールサイズのラインナップでした。
そんなリョウガの競合は言わずと知れたシマノの人気リール、カルカッタコンクエストです。
このカルカッタコンクエストのラインナップは、まさに隙がない。
100番~400番に加えてベイトフィネス仕様機までそろい、スプール径も最小はBFSの32mmから400番の43mmまでリョウガと比べると選択肢の差が圧倒的です。
リョウガは、中重量級ルアーにおいてはカルカッタコンクエストと戦うことができるとしても、小型ルアーにおいては歯が立ちません。
特に、100番とBFSに対抗できるリールが欲しい…そんな時に、CTコンセプトが登場した訳です。
この30mm径CT SVスプールを搭載すれば、まさにこの100番とBFSの間を突く形で絶妙のゾーンを攻めることができるようになります。
そこで、ミリオネアの復活!というエポックメイキングなニュースとともにこのスプールを搭載すれば話題性を集めることができますし、あの『ミリオネア』なら『カルカッタコンクエスト』という圧倒的ネームバリューにも対抗できる存在になり得ますよね。
新しい名前の丸型リールに無難にCT SVスプールを搭載するだけでは、なかなかカルカッタコンクエストの牙城を崩すほどのインパクトは与えられないような気がするんですよね。
ミリオネアを復活させる、という判断にはそういった狙いもあるのではないかと個人的には思いました。
ただ、せっかくこのレベルのリールを復活させるならTWSは搭載してほしかった…。
次項では、ミリオネアCT SVのライバルになるであろうカルカッタコンクエストの100番とBFSとの比較をしてみようと思います。
カルカッタコンクエストとの比較
3モデルの主なスペックを表にまとめました。
品番 | ギア比 | 最大ドラグ力 (kg) | 自重(g) | スプール寸法 (径mm) | フロロ糸巻量(lb-m) | 最大巻上長 (cm/ハンドル1回転) | ハンドル長(mm) | ベアリング数 S A-RB/ローラー | 本体価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カルコンBFS | 6.8 | 4.0 | 200 | 32 | 8-45 | 68 | 42 | 12/1 | 54,000 |
カルコン100 | 5.2 | 4.0 | 215 | 36 | 12-100、14-90、16-80 | 59 | 38 | 12/1 | 54,600 |
ミリオネアCT SV 70 | 6.3 | 5.0 | 210 | 30 | 12-35~70 | 59 | 40 | 10/1 | 52,500 |
このように表にまとめると、カルカッタコンクエストのBFSと100のまさに間をついたリールであることが見えてきます。
自重はちょうど中間の210g。
糸巻量も中間。
巻上げ長は巻物を意識しているだけにカルコン100と同じ。(ギア比には大きな差がありますが。これは30mmスプールのライン回収量の少なさをカバーするためですね。)
ちなみにドラグはミリオネアCT SVの方が強いです。
そして、価格はほんの少し両カルカッタコンクエストより安い設定です。
各リールの性格を簡単に見ていきます。
カルカッタコンクエストBFSは軽量ルアーのアキュラシーはナンバーワンでしょうが、浅溝ブランキング(肉抜き)スプールなので糸巻量は少なく、強度的にもヘヴィーウェイトなルアーはキャストできません。
↓カルコンBFSのスプール
出典:シマノ
カルカッタコンクエスト100は太目のラインでも量を巻けて、重量のあるルアーでも対応できますが、スプール径が36mmという設定でなので軽量ルアーではキャストしにくさが出てきます。
ミリオネアCT SVは30mmのブランキングされていないG1ジュラルミンスプールです。
径が径ですから軽量ルアーでも問題なく扱える上に、ブランキングなしのG1ジュラルミンということでヘヴィールアーでもキャストできます。
ダイワの狙いはまさにここでしょう。
『軽量ルアー向け巻物専用リール』という、カルカッタコンクエストのラインナップの隙間を突いてきた印象です。
結構人気になるんじゃないでしょうか?
ここで評価を高めれば、今後はミリオネアシリーズのラインナップ拡充が進むかもしれません。
さいごに
出典:ダイワ
ミリオネアCT SV、なかなか面白いところをついてきたリールだと思います。
比較的手薄な、軽量ルアー対応巻物リールというジャンルを的確に突いてきました。
これはCTコンセプトならではの発想ですよね。
カルカッタコンクエストは全体的にスプールの大径化をすすめているところですが、ミリオネアCT SVは逆転の発想からできた小径スプールのリールになります。
やはり巻きの釣りには丸型リールの安定感、巻き感度が必要!というアングラーも多い中で、このCTコンセプトの丸型リールが市場にどのように受け入れられるか非常に興味深いところです。
カルカッタコンクエストとは方向性が違うリールですし、その特性から考えても需要はあるのではないでしょうか。