【魚の熟成方法】仕組みとコツを知るべし!美味しく長持ちさせるには?

魚の熟成が近年注目されていることをご存知でしょうか?

魚と言えば鮮度が命!という印象を持ちがちですが、上手く管理して熟成させれば、よりうま味を引き出すことができます。

例えば熟成魚の有名なお寿司屋さんなんかも増えてきました。

実際に、私も魚を釣ってきたら熟成させて楽しんでいますが、ホントに美味しくなりますよ。

ただし、時間をおくということは腐らせてしまうリスクもついてまわります。

何に気を付ければそういったリスクを極力排除できるのかも気になりますよね。

今回は、実際に私が釣ってきた魚を熟成させている方法をご紹介します。

熟成とは?仕組みは?

そもそも熟成とはどういうことを言うのでしょう?

まずはその仕組みに少し触れておこうと思います。

我々が魚を食べた時に感じるうま味。その中心的役割を果たすのはイノシン酸と呼ばれるうま味成分です。

ちなみにイノシン酸は、グルタミン酸、グアニル酸と共に、三大うま味成分なんて言われることもあります。

これらのうま味成分を組み合わせる、いわゆる『うま味の相乗効果』というのが、料理のキモだったりするわけです。

例えば、日本では古来からイノシン酸のカツオ節、グルタミン酸の昆布、グアニル酸の干しシイタケ…といったものを組みあわせてダシをとっています。

これらは単独でダシを取るよりも組み合わせた方が深みのある味わいになりますよね?

我々はうま味の相乗効果なんて普段あまり考えたりはしませんが、なんとなく舌では知っているということになります(笑)

さて、そんなうま味成分の1つであるイノシン酸ですが、実は釣ったばかりの魚にはあまり含まれていません

死んだ後、身のアデノシン三リン酸という成分…イメージしやすい様に言うと筋肉を動かしたりするエネルギーの源のようなものなんですが、これが分解されてイノシン酸に変化していくんです。

この変化が進行していくことを熟成と呼ぶのです。

イノシン酸の生成をうまく促して、うま味の増した魚を食べるということですね。

ただし、イノシン酸もさらに分解が進めば、臭み成分であるイノシンなどに変化していき、やがて腐敗するという流れになります。

そして、血や血合い、内臓、皮やウロコなどの成分があると、腐敗進行はより速いと考えてください。

個人的に熟成とは、これらの化学的要素を理解して、上手くコントロールすることなんだと考えています。

熟成の前段階で大切なこと

熟成の具体的な方法に入る前に、触れておきたい大切なことがあります。

それは魚を釣ったあとの、『締める』という行為です。

様々な締め方がありますし、自分が出来る範囲の締め方でいいと思うのですが、特に意識してほしいのは血抜きです。

先ほどの項でも最後に書きましたが、血は腐敗を速める大きな原因になりますから、極力体外に排出させておきたいです。

個人的に考える理想は、釣った後にしばらく生け簀で生かしておいて回復させた上で、脳締め、神経締め、血抜きをし、ウロコ、内臓まで処理しておくことだと思っています。

が、実運用上、そこまでを求めるのは準備、労力、時間の面から非現実的でもあります。(もちろんやれる人はやればいいんですよ?)

私個人が最低限していることは、釣ったあとの脳締め、血抜きです。

脳の位置は魚種によって多少違いはありますが、だいたいは以下の位置にあります。

 

エラに縦に入る線と、側線の延長線上で交わる赤で囲った辺りです。

この辺りにある脳をナイフなどで突けば、目の瞳孔が開いて、各ヒレがピンピンに開くので、それが上手くいったサインです。

その後、すぐ両エラと魚体をつなぐ膜をナイフで切り裂き、海水を入れたバケツに入れて、出来る限り血を抜きます。

特に血抜きは入念に、私は手でエラを開かせて魚体をゆすります。

血がたくさん抜けるとエラの真っ赤な色が白っぽくなって、見るからに血が抜けたことが分かります。

これでクーラーに放り込んでおけば、それなりの状態で持って帰れます。

もし最終的に釣りが終わった後に余裕があれば、内臓やウロコの処理まではできればベターですね。

締めという行為はまだまだ科学的に解明されていないこともあるそうなので、一概に何がベストとは言えないと思っていますが、私個人の経験上は、これで十分に美味しい魚を食べることができると思っています。

熟成方法

具体的に、私が採用している方法をご紹介します。

今回は、先日釣れた40cmちょっとの食べごろシーバスを例にご紹介しますね。

体高もあって筋肉質。とても美味しそうな体つきです。脳締めと血抜きを丁寧にしました。

 

まずは帰宅後、なるべく早く魚を3枚に卸します。

骨まわりに多くの血が通っているので、早く身と骨を切り離したいからです。ただ、この日は帰りが遅くなったので、内臓とウロコ処理までしかできませんでした(笑)

完璧にしようと無理しすぎたらヤル気がなくなりますから、苦痛過ぎない範囲で頑張ればいいですよ。

 

皮は腐敗しやすいので剥いでしまってもいいのですが、身と皮の間に脂やうま味が強くあり、それが身にも時間をかけてなじんでいくと考えているので、私は2~3日ほどは皮を残しています。

下の写真を見ても、皮に薄くゼラチン状のものがついているのがお分かりいただけると思います。

 

身を卸したら、全体的に塩を振っていきます。これは魚料理でよくある臭みを抜く、うま味を引き出すという効果以外に、腐敗につながる余計な水分を抜くという効果があると考えています。

 

塩を振った後は、キッチンぺーパーとラップで丁寧にくるんで、冷蔵庫で半日ほど保管します。

 

時間が経って冷蔵庫から取り出したら、このようにペーパーが全体的に水分を吸っているはずです。

 

ペーパーをはがして、身を流水で洗います。

この時、塩分と一緒に、血などの余計な汚れを出来る限り丁寧に落としてから、キッチンペーパーでしっかり拭いていきます。

血抜きがしっかり出来ていれば、それほど血は気にならないはずですが、身からにじみ出たりしてきます。

洗った後の水分も腐敗の元なので丁寧に拭きます。

スズキやハタ系の魚は、下の写真の赤線の部分の身が簡単に割れるので、水が入り込みます。そういうところも意識して拭いてます。

 

今回はこんな感じに。

う~ん美しいパールホワイト。キレイになると気持ちいいです(笑)

 

ここまでできれば、あとはまたキッチンペーパーとラップでくるんで、冷蔵庫で保管します。

あと、冷蔵庫に保管する前に、身の匂いをかいでおいてください。

今後は主に匂いと身の色で熟成の進み具合を判断していくので、基準となる匂いはなんとなく覚えておいてほしいです。

 

この後、毎日清潔なキッチンペーパーに交換します。

交換しないとペーパーが吸った臭みが身に移ります。

毎日お刺身で少しずつ食べていくと、食感の変化と味わいの変化を楽しめますよ。

熟成が一定以上すすみ腐敗してくると、あきらかに独特の酸味のある匂いがしてきて、色は黄色みがかったり(白身魚系)、黒ずんだり(青魚系)します。触るとヌメりも出てきます。

どこまでいけるかは個々の自己判断になってくるのですが、「多少やばい感じはするけど、もったいないから…」と無理はしないでくださいね。

個人的には最終判断は匂いで判断しています。

また、何日寝かせるのが理想なのか、何日保存がきくのか、というのは魚種やそのサイズ、各々の処理の練度や精度にもよるので一概には言えません。

例えば、基本的には白身魚よりも青魚の方が痛むのは早いですし、魚体が大きいほど熟成にかかる時間は長くなります。厳密に言うと、冷蔵庫内の温度や湿度にも影響されます。

あくまで参考程度にしてほしいのですが、私個人としては、冷蔵保存の日持ち(釣った日起算。食べごろではありません)は以下のイメージをもっております。一般的な冷蔵庫で、40~60cmほどの大きさで…というざっくりした前提条件にはなりますが。

スズキや根魚など白身魚:1週間前後
青物系:5日前後(表面が酸化して黒ずんできたら刺身なら適宜カットして食べる)

血の気の多い魚ほど、日持ちしにくい(高度な管理技術・環境が必要)とお考えください。サイズが小型ならさらに早めに食べるのが無難です。

このペースでは食べきれない!と思ったら、冷凍するなどしてください。

なお、今回ご紹介したのは、私個人が実践して今のところ問題は起きていない手順・考え方ですが、生モノの保存の話ですから、絶対に大丈夫!正解!というものではないと思っています。繰り返しますが、保存環境にも左右されます。自分の感覚を優先に、あくまで参考としてくださいね。

ただ、熟成に関するコツ的なものは掴んでもらえるかと思います。

しっかり管理すれば、魚って簡単には腐らないんだな…。こういう風に身が熟成していくんだな…。ということが実感できるはずです。

 

以下は私が実際に熟成させて食べた、50センチ程度のマゴチの薄造りですが、上は熟成4日目、下は熟成9日目のものです。

色味が乳白色から黄色みがかってだいぶ変わってきているのが分かりますね。

 

9日目でもしっかり管理していたので嫌な匂いもなく、モチモチしているなかにもマゴチらしい食感が適度に残り、美味しく食べれました。

少し色味が変わって黄色味がかるかどうか…くらいの頃が一番美味しいという人もいますね。

 

対して以下は60センチ程度のスズキを7日熟成させたものですが、かなり身がモチモチになって、うま味はあるものの、個人的にはもう少し早く…例えば4日前後で食べる方が好きかなと感じました。

 

以下は同じスズキを3日ほど熟成させたタイミングでカルパッチョにしたものですが、歯ごたえとうま味のバランスが良く、シンプルな味付けが生きてとても美味しかったです。

 

結局こういったものは好みの世界にもなってきますが、自分で実験・体験しながら変化を堪能し、自分好みの状態を求めていく…というのが、熟成の魅力だと思います。

さいごに

今回は魚の熟成についてご紹介しました。

料理が好き!
刺身大好き!

自分で釣った魚はできるだけ美味しく食べたい!
冷凍させず日持ちさせたい!

といった方は、多少手間にはなるのですが是非チャレンジしてみてほしいです。

お刺身で美味しく食べれるのはもちろん、火を通しても美味しくなります。

↓熟成スズキのホイル焼き。抜群に美味しいです(笑)

 

科学的に考えてうま味成分が増してるんですから、ある意味当然ですね(笑)

私自身、まだまだ熟成については試行錯誤している段階ですが、本当に奥深くて面白いと思います。

この記事が、みなさまの新たな釣りの楽しみの1つにつながれば幸いです。

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