ジギング、ショアジギングといえばルアーはメタルジグ。
鉛に代表される金属のかたまりにアングラーが命を吹き込んでアクションさせます。
そのアクションに大きな影響を与える、バランスや形状、素材などのファクターを気にしたことはありますでしょうか?
ジギング系の釣りは、ラインにメタルジグ…すなわち金属のかたまりをつないでいるだけですから、こういったファクターがアクションはもちろん、飛距離やフォールスピードなどなどに与える影響は非常に大きいということを意識すべきです。
ただただ人気ジグだから…という観点でなんとなくメタルジグを選んでいるとしたら、それは釣果にも影響している可能性大ですよ。
今回はメタルジグについて詳しく解説します。
メタルジグを構成するファクター
メタルジグはシンプルな形状ながら、実は緻密な設計がなされています。
どれも大して差はないでしょ!なんてことはありません。
主には以下の3点がメタルジグの方向性を決めると言えます。
バランス
形状
素材
それぞれのファクターについて、次項から詳しく解説していきます。
バランス
バランスとは、メタルジグのどこに重心があるかを指し、大きくは以下の3種類で語られます。
フロントバランス
リアバランス
センターバランス
メタルジグを大きく、
頭側(ラインをつなぐ側)
尾側
その中間
の3つに分けて見た時に、頭側に重心があるのがフロントバランス、尾側に重心があるのがリアバランス、その中間に重心があるのがセンターバランスです。
それぞれのバランスについて詳しく解説します。
前置きしておきますが、これから述べるのはあくまで一般論です。
例えば一言にセンターバランス…と言っても、ややリアバランス寄りとか、ややフロントバランス寄り…といった感じにメーカーの狙いによって調整されていますし、その他形状や素材との組み合わせによって、弱点を克服しようとするものまであります。
そういったことを理解して購入するためにも、まずは各ファクターの一般論を知っておきましょう!
フロントバランス
メタルジグの頭側に重心があるメタルジグをフロントバランスと呼びます。
フロントバランスの一般的な特徴は以下の通り。
アクションレスポンス…◎
飛距離…△
フックへの絡みにくさ…△
水平スイム…◎
フォールスピード…○
フォールアピール…○
ただ巻き性質…ウォブルとロール混合
アングラーのロッドワークに最も機敏に反応してくれるのがフロントバランスです。
ジャークでもっともアピールできるバランスと言えます。
スイミングでは水平姿勢を保ちやすくなります。
反面、飛距離は伸びにくいのがデメリット。
また、よく動くがゆえにフックがラインを拾いやすいので、ロッドワークの大きさやアクションのリズム、フォーリングでのラインテンションの掛け方などで慣れが必要です。
リアバランス
メタルジグの尾側に重心があるメタルジグをリアバランスと呼びます。
リアバランスの一般的な特徴は以下の通り。
アクションレスポンス…△
飛距離…◎
フックへの絡みにくさ…◎
水平スイム…△
フォールスピード…◎
フォールアピール…△
ただ巻き性質…ウォブル主体
飛距離がもっとも伸びるのがリアバランスです。
ショアジギングでは飛距離が大きなテーマの1つであることは間違いないので、その点ではもっとも優位なバランスと言えますね。
ただし、フォールでも水平姿勢を保つ時間が短く尻下がりに落下しやすいので、フォールスピードが速くなります。
すなわち水中でのアピール時間は長く取りにくいということです。
ただ巻きでは尻下がり姿勢にはなりますがウォブルが強くでやすく、安定して泳ぎます。
基本的には遠くに投げれて速く沈むバランスとイメージしてもらったら分かりやすいですね。
センターバランス
メタルジグの中心付近に重心があるメタルジグをセンターバランスと呼びます。
センターバランスの一般的な特徴は以下の通り。
基本的にはフロントとリアの中間的性質をもちます。
アクションレスポンス…○
飛距離…○
フックへの絡みにくさ…○
水平スイム…○
フォールスピード…△
フォールアピール…◎
ただ巻き性質…ウォブルとロール混合
バランス総評
近年は扱いやすいセンターバランスのメタルジグが主流になっています。
フォールで見せやすいものが多いですし、重心位置やデザインの工夫や素材との組み合わせによって飛距離もそこそこ稼げます。
かと言ってセンターバランスを持っていればそれでいいのか?と聞かれれば必ずしもそうとは言えません。
例えば、飛距離で言えばリアバランスが一番ですし、『魚まで届かなければ釣れない』という釣りの基本を思い知らされることが多いのもショアジギングです。日によってはリアバランスのメタルジグの有無が釣れる釣れないの生命線になるかもしれません。
水平スイムが効くときもあれば、速いフォールには喰ってこないこともあるでしょう。
やはり、それぞれのバランスを揃えて、その特徴によって使い分けすることがメタルジグで他人と釣果の差をつける要素の1つになり得ます。
形状
形状も厳格な線引きをもって区別されているわけではなく、メーカー独自に定めているケースが多いです。
一般的に語られることが多い形状について説明します。
ノーマル
何をもってノーマルとするのかは難しいところですが、オーソドックスなバランスの取れた形状がノーマルタイプです。
太すぎず、細すぎず、長すぎず、短すぎず…といったところです(笑)
各メーカー、メタルジグをシリーズ展開する中で、ノーマルタイプとして基準となるメタルジグがあって、それに対してロングとかショートとか設定しているケースが多いです。
そういうケースは分かりやすいですが、必ずしもシリーズ展開している訳でもないので、なんとも中間的な、どの形状と判断すれば良いか悩ましいメタルジグも存在します。
ショート
ノーマルタイプに比べるとやや寸詰まりなボディ形状で、その名の通り短くなっているタイプがショートタイプです。
やや短めな分、幅が広めになるケースが多いです。
フォールでややゆっくり見せることができます。
ベイトフィッシュのサイズが小さめのときにもいいですね。
ロング
見るからに細長い形状をしたメタルジグがロングタイプです。
水の抵抗を受けにくいので、フォールが速いのが特徴です。
アピール力も強く、オフショアのジギングで使われることが多いです。
飛距離もでやすく、ショアでも水深があるところで大物を狙うケースなど出番があります。
ベイトがサヨリやサンマなど細長いものについている時には絶大な威力を発揮します。
参考までに上の写真は同じメーカーが販売しているメタルジグで、どちらも30gなのですが、上はロングタイプ、下はノーマルタイプです。
違いが分かりやすいですね。
ワイド
非常に幅が広くてスロージギング用ジグに多いのがワイドタイプです。
ショートタイプよりも明らかに扁平な形をしています。
フォールを強く意識した形状なので、ゆっくり、キラキラと見せながら誘います。
対称・非対称
ジグを裏表で見たときに形状が異なるかどうかで語られます。
対称のものは、アクションに対して素直に動いてくれます。フォールも規則正しくなりやすいです。
非対称のものは、受ける水流によってイレギュラーアクションが生まれ、ある程度オートマチックに予期せぬアクションが生まれやすくなっています。
↓非対称
↓対称
形状総評
各メーカー、メタルジグをシリーズ展開して、『○○ジグ ショート』とか『○○ジグ ロング』とか、『○○ジグ スロー(ワイド形状)』といった感じで一通り揃えているケースが多いです。
最近は非対称のメタルジグが多いように感じます。
ノーマルを軸に、バリエーションを持たせておきたいところです。
素材
素材も重要なポイントです。
金属の塊ゆえに、その素材によって大きさ、フォールスピードに直接影響を与えます。
キモになるのはその比重。
比重とは超簡単に分かりやすく言うと、ある物質とある物質が同じ体積だったときに、どっちが重いの?という比較をしたものです。
一般的には水を1として、比べる物質の比重がそれよりも大きければ大きいほど、水と同じ体積なのに重いということになります。
ちなみに、豆知識ですが、通常は4℃の水を標準とするらしいです。
4℃の水は体積 1cm3の質量がほぼ 1g、すなわち密度もほぼ1g/m3になるから…ということらしいです。
要するに1cm3の水ほぼ1gに対して、その物質が1cm3で何gあるのか?ということ。
比重が高いからいい、低いからいい、ということではなく、適材適所で使い分けするのがベストです。
メタルジグに使われる素材の代表的なものと、その比重は以下の通り。
鉛:11.34
タングステン:19.3
鉄:7.87
錫:7.3
亜鉛:7.14
アルミ:2.7
実際は亜鉛合金とかアルミ合金といった感じで、他の金属と組み合わせた金属を使用しているケースも多いです。
それにしても、最も重いタングステンとアルミの差はすさまじいですね。
当然、この2つの素材で作ったジグが同じ重さなら、大きさは全然違ってきます。
タングステンよりアルミの方がかなり大きくなる分、水の抵抗が増してフォールは遅くなる…という訳です。
あと、これも豆知識ですが、タングステンよりも比重が高い金属も存在します。
たとえば意外かもしれませんが、金は19.32あるんですよ。
鉛
もっとも一般的な素材と言えます。
コストも安く、成型が容易なので採用されやすいです。
我々アングラーにとっても財布に優しい素材なので、メタルジグのバリエーションを増やす意味で最も身近な存在です。
タングステン
いわゆるレアメタルです。
非常に比重が高く、小さいボディでも重量を稼げます。
すなわち、鉛と同じサイズでもより重く作れるので、飛距離を稼げます。
逆もまたしかりで、同じ重さでも小さく作れるので、喰わせ力が高まります。
ただし、単純に重いということはフォールも速くなります。
一概にメリットばかりではないことは頭に入れておきましょう。
高価なのもツライところです。数投して根掛かりしたらテンション結構下がります。
そこで、鉛メインに、一部タングステンをコンポジットしたモデルがあります。
以下のメタルジグは、腹部だけタングステンが搭載されています。
コストを抑えつつ、少しでも自重を稼ぐためのアイデアですね。
鉄系
鉛よりも比重がおよそ30%ほど軽く、その分フォールでゆっくり見せれることから重用するアングラーも多いです。
錫系
錫(スズ)は鉄よりもさらに少し比重が軽い素材です。
融点が鉄よりも低く成型しやすいというメリットがあります。
これも鉄と同じようなイメージで、ややゆっくりフォールさせて見せることができると考えてもらっていいです。
亜鉛系
亜鉛はさらに錫よりも比重が小さい素材です。
鉄と比べると比重が10%ほど軽いことになりますね。
鉄や錫に近いサイズ感で一番ゆっくり見せやすい素材が亜鉛と言えます。
アルミ系
アルミはかなり軽く、鉛の約4分の1の比重しかありません。
すなわち、相当ゆっくりフォールさせることができますが、逆に着底にも時間が掛かることを意味します。
サイズも大きくなってしまうので、万能ジグというよりは使いどころを選ぶタイプでしょうが、ハマる状況も確実にあります。
かなり高価な素材なのが切ないところですが、いくつか持っておいて損はないですね。
素材総評
一般的にはメタルジグの素材と言えば鉛がスタンダードであり、これを軸に揃えていくことが多いかと思います。
比重が重いメタルジグは、飛距離も出ますしフォールも早い分、活性の高くない魚には追いきれません。
逆に比重の軽いメタルジグは飛距離が出にくくなりますが、フォールが遅くなることでゆっくり見せて喰わせる間を与えることができます。
ただし、その反面フックがラインを拾いやすくなる…テンポが悪くなる…ということもあります。
やはり一長一短なので、その強みを生かせる状況で投入したいですね。
たまーーーにジグで遊ぶ程度…のレベルであれば、鉛のメタルジグだけ持っていれば十分ですが、いわゆる本格派ジギンガーを目指すのであれば、その他の素材も試してみて自分のスタイルやリズムに合うものを探すのも面白いと思いますよ。
改めて言いますが、どの素材が最高です。というものではなく、ケースバイケースで使い分けれたらさらに釣果を伸ばせますよ。ということです。
さいごに
今回はメタルジグのバランス、形状、素材について解説しました。
一見ただの金属の塊に塗装しただけ…のメタルジグですが、シンプルな構造ゆえに非常に奥深い世界でもあります。
例えばミノーなら、何センチ潜る…などといった基準があるのでシステマチックに整理して他ルアーとの使い分けもしやすいのですが、メタルジグについてはなんとなくやってます…というアングラーも多いのではないでしょうか?
同じシリーズのメタルジグをサイズ違いで持ってたらいいでしょ!という方もいるでしょうし、それでも釣れることは事実です。
ですが、さらにそこに同じ重さでもバランス、形状、素材の違うメタルジグを投入すれば、さらに釣れる可能性が高まることも事実です。
メタルジグで釣果を伸ばしたいなら、こういったことにも興味をもつことが1つの近道になるはずです。
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